学生の方が、交通事故の被害者になってしまった場合は、主な損害賠償として以下の項目の請求ができます。
治療費・・・怪我の治療にかかった費用
付添看護費・・・医師の指示または怪我の程度等により必要があると認められた付添看護に要した費用
将来介護費・・・医師の指示または症状の程度により必要があると認められた場合の将来の介護費
通院交通費 ・・・タクシーなどの病院に通院するための交通費
学習費 ・・・学校などに支払う授業料
休業損害・・・怪我により仕事を休むなどして収入が減った場合の損害
遺失利益・・・後遺症などによる労働能力の低下や収入の変化を勘案した将来得られたであろう利益
慰謝料・・・精神的な損害。傷害の場合、入院や、通院の期間により算定。他に死亡、後遺症による慰謝料など
学生の方の治療費
学生の方でも、原則として、実際にかかった治療費は、全額損害と認められます。
ただ、症状からみて必要性のない診療(過剰診療)や社会一般の診療費の水準に比して著しく高額な診療(高額診療)については、損害とは認められないことがあります。
また、「治療を続けても、それ以上の症状の改善が見込めない」といういわゆる症状固定の状態になりますと、治療を続けても、それ以上の症状の改善は見込めないので、その後の治療は原則として必要性がなく、症状固定後の治療費は損害とは認められないのが通常です。
学生の方の付添看護費
学生の方が交通事故に遭って入院したため、家族が付添って看護した場合、付添看護費(入院付添費)は請求できるでしょうか?
付添看護を行うようにとの医師の指示があった場合や、受傷の程度等により付添看護を行う必要があると認められる場合には、家族等の近親者が付添人であれば1日につき6500円が被害者本人の損害として請求できます。
もっとも、被害者の看護のために、仕事を休んで付き添った家族の方としては、仕事を休んだことによって収入が減った分の休業損害を請求したいと考えられるかもしれません。
裁判所では、付き添った近親者の収入を考慮して、付添費の額を決める例もあり、特に受傷の程度が重い場合に、付き添った近親者の休業損害額を参考に付添費を認めた例が多いです。
学生の方の学習費、通学付添費等
学生の方が交通事故に遭った場合、傷害の程度によっては休学や留年をせざるを得なくなることもあります。
この場合、授業料が余分にかかったり、補習が必要になったりしますので、この授業料や補修費は損害として認められます。
また、交通事故に遭ったことにより、通学できなくなり、納入した学費・授業料が無駄になったり、購入した定期代や下宿先の賃料が無駄になったりすることもありますが、この学費、授業料、定期代や賃料も損害として認められます。
受傷の程度、内容や年齢等の具体的な状況により通学に付き添う必要があると認められる場合には、通学付添費も損害として請求できます。
学生の方の休業損害
学生の方は、通常、仕事をしていませんので、怪我により仕事を休んで収入が減るということもありません。そのため、原則として休業損害は請求できません。
ただ、学生の方でも、アルバイトをしていて収入がある方については、怪我により仕事を休めば収入が減りますので、この場合は、現実に減少した収入額が休業損害と認められます。
では、学生の方が、交通事故に遭い、就職が遅れてしまったり、就職内定が取り消されてしまったりした場合は、休業損害を請求できるのでしょうか?
交通事故により就職活動が行えず、就職が遅れてしまった場合であって休業損害を請求できます。
この場合は、賃金センサスによる平均賃金額を基礎として就職が遅れた期間の休業損害額を算出することが多いです。
また、交通事故により就職内定が取り消されてしまった場合も休業損害を請求できます。
この場合は、就職内定先での給与推定額を基礎として休業損害額を算出した裁判例があります。
学生の方の後遺症逸失利益
交通事故によって被害者に後遺障害が残り、十分に働くことができなくなった場合に、被害者が交通事故に遭わなければ将来得られたであろう利益を後遺症逸失利益といいます。
では、収入を得ていない学生の方がこの後遺症逸失利益を請求できるのでしょうか?
学生の方も、いずれは卒業して就職すると考えられるので、後遺障害により十分に働くできなくなった場合には後遺症逸失利益を請求できます。
これを計算するにあたっては、賃金センサスによる平均賃金額を基礎として、後遺症によって労働能力が低下して働くことができなくなった割合(労働能力喪失率)と労働能力が低下した期間(労働能力喪失期間)を乗じるのが基本となります。
大学生の場合、大卒の賃金センサスが用いられます。大学生になっていない者についても、大学に進学する予定がある場合には、大卒の賃金センサスが基礎収入と認められることがあります。
労働能力が低下して働くことができなくなった割合(労働能力喪失率)は、14級なら5%というように、後遺障害の等級に応じてあらかじめ定められています。
労働能力が低下した期間(労働能力喪失期間)の始期は、一般的には症状固定日ですが、学生の方の場合、症状固定日の時点では未だ就職していないと考えられますので、原則としては18歳になったとき、大学生や大学に進学する予定の方は大学を卒業したときとなります。
大卒の賃金センサスによる場合、平均賃金額は比較的高くなりますが、労働能力喪失期間の始期は大学を卒業したときとなり、その分、労働能力喪失期間が短くなりますので、注意が必要です。
また、労働能力喪失期間の終期は、裁判実務では、67歳を就労可能年齢としていますので、原則として67歳までということになります。
ただ、損害賠償では、本来、被害者が67歳になるまで受け取ることのできなかった収入を賠償時に一括してあらかじめ受け取ることになりますので、後遺症逸失利益の計算にあたっては、これを銀行に預けたりして運用することによって得られる利益を控除する必要があります(中間利息控除)。
したがって、後遺症逸失利益の算定方式は、次のとおりとなります。
賃金センサスの平均賃金額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除
その他
むち打ちによる後遺症や、治療費や慰謝料など、相当の賠償金を請求できる可能性がありますので、お電話などでお気軽にご相談ください。